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ヤフー子会社からの出資で仮想通貨事業に参入 18年秋に開始

大手IT企業の仮想通貨事業への参入が加速しているようです。GMO、DMMなどの新規参入に加え、コインチェックの買収によるマネックスの参入など既存事業者の買収や出資を通じての参入が増えています。

ニュース概要

Yahoo完全子会社のZコーポレーションが20億円余りを出資し、ビットアルゴ取引所東京から第三者割当増資と、その親会社であるシーエムディーラボから株式譲渡を受けます。出資後は株式の40%をZコーポレーションが取得し、残りの60%をシーエムディーラボが保有するようです。

Zコーポレーションとその意図

ZコーポレーションはYahooの子会社で、元同社の社長で現在は取締役会長の宮坂現氏が社長を務めています。ヤフーでは取り組めなかったような新規事業を行うための会社と説明されていましたが、詳細は明らかになっていませんでした。恐らく、自力で0から参入するよりも既に仮想通貨交換業者として認められている会社に出資する方が良いと判断したようです。

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なぜマネックスはコインチェックを買収したいのか?今後どうなるか?

シーエムディーラボとは

シーエムディーラボは研究者の集団のようで、金融工学や医療工学の分野で研究やツール提供、解析などを行っているようです。

株式会社シーエムディーラボは、「金融工学」、「医用工学」、「農工学」の研究者集団です。

金融工学関係では 統計学に基づいた市場分析ツールの研究・開発アルゴリズム・トレーディング・モデルの研究・開発 経済・金融情報のテキストマイニング・ツールに関する研究・開発個人向け株式分析サイト「DreamVisor.com」の運営を行っています。

医用工学関係では FG(ファイバーグレーティング)視覚センサを用いた病院向け診断システムの研究同センサの原理を応用した高齢者施設や家庭向けのセキュリティ装置の研究 睡眠時の呼吸状態に対する時系列解析及び統計解析を行っています。http://www.cmdlab.co.jp/services

 今後

仮想通貨取引に対する規制が整備され、大手事業者の参入が増えるにつれ、よりセキュリティや管理体制を強化しやすく、マーケティング予算も多く使える大企業が増えてくるかと思います。楽天やDeNA、グリーやMixiあたりも買収や出資を通じての参入があり得るように思います。

なぜマネックスはコインチェックを買収したいのか?今後どうなるか?

マネックスがコインチェックを買収するというニュースが入りました。コインチェックは今年に入り、約580億円分ほどのNEMという仮想通貨を盗まれたものの、自己資金で補償を行い、今後の動向が注目されていました。これまでの経緯と今回の買収の思惑、今後の動向に関して考えてみます。

何が起きているのか?

マネックスがコインチェックを買収する調整中

端的に説明するとこのようなことになっています。マネックスがコインチェックを買収し、経営陣を刷新することを調整しているようです。スタートアップでこのようなリーク(今回がどうかはわかりませんが)が行われるようなことはよくあり、このようなニュースが出るタイミングではほとんど確定しているケースが多いです。

  • マネックスがコインチェックの株式の過半数を取得する方向
  • 実現すれば、コインチェックの経営陣は刷新
  • 買収額は数十億円の見込み
  • 金融庁はコインチェックがマネックスグループの下で経営体制を改善できるのか精査

コインチェック マネックス傘下で経営刷新へ 最終調整(NHK)
コインチェック支援要請 マネックスが買収案提示(日経新聞)

そして、このニュースに対してマネックスからはお決まりの「うちの会社が言っているわけではない」というコメントが出されています。

本日、当社グループの仮想通貨交換業への参入に関する日本経済新聞電子版において報道がありましたが、当社グループから発表したものではありません。(中略)本年 1 月にはマネックス仮想通貨研究所を設立し、安全で社会的に信頼される仮想通貨交換業の検討を進めてまいりました。本日報道された会社である仮想通貨交換業者の買収を検討しておりますが、現時点で決定した事実はありません。

本日の一部報道について(マネックス)

関係者について

コインチェック株式会社

仮想通貨が売買できる取引所を運営している会社です。もともとはレジュプレスという会社名でStory.jpというサービスを運営していました。これは、読者がストーリーを投稿できるサービスで、ビリギャルなどが生まれました。その後、新規事業として仮想通貨の取引所を始め、CMも放映し、急拡大していましたが、2018年の1月にハッキングにより、約580億円のNEMという仮想通貨を盗まれました。社長は和田晃一良さんで東工大の在学中に起業。(後に退学)COOが大塚雄介さんで早稲田大学の大学院卒業後、ネクスウェイという会社で営業や事業企画を行っていました。

マネックス証券株式会社

オンラインの証券会社です。元ゴールドマンサックスの松本大さんがソニーとともに立ち上げました。オンライン証券取引の可能性にいち早く気づき、1999年に会社を設立。松本さんがゴールドマンサックスを退社したときには、上場する直前で後、数ヶ月で数十億円ともいわれる金額が手に入ったのではないかという話や女子アナウンサーと結婚したことなどが有名です。

各関係者の思惑

公開されている情報をもとに各関係者の思惑を考えてみたいと思います。

コインチェック

  • NEM盗難で580億円を失っている
  • 金融庁に目をつけられている
  • 信用はなくなっている

まず、直近でかなりの金額を失っていること、それに加えて投資家や金融庁からの信用が無くなっている状況があります。自己資金で、NEMの補償を行ったくらいなので、キャッシュの問題はそこまで無いように思います。顧客基盤もありますし、コインチェックでしか扱っていない(いなかった)通貨もあるので、競合優位性もまだありそうです。一方で、事件後の一連の対応でこの経営陣で大丈夫なのかといった不安は広がっています。事業は継続できるが、金融庁や消費者からの信用を取り戻すのは今のままだと困難だという考えはありそうです。買収が本当に数十億だとしたらなかなか安いと思うので、何としても売りたいというように思います。(NEMを取引していた会員だけで25万人以上いますが、獲得単価が1万円としたらそれだけで25億円の価値です)

マネックス

  • 普通に参入すると時間がかかる
  • 既にユーザーがいる
  • 安く買える

マネックス側はシンプルで仮想通貨取引に参入したいものの、通常のステップで勧めると非常に大変なので、既存事業を購入することは現実的です。今回の盗難の件で、さらに金融庁の審査や監視は厳しくなるでしょうし、SBIの仮想通貨取引所もの開始が延期されました。コインチェック事件の影響もあるでしょう。(SBI北尾社長コインチェックに激怒「カス中のカス」と猛批判)したがって、マネックスとして考えるべきは参入までの時間や既にユーザーが数十万~数百万単位でいるということ、かなり割安な金額で買えるというプラスの面と訴訟リスクや内部体制を整えたり、金融庁に対応する工数などのマイナス面のどちらが大きいかということです。その結果、マイナス部分は十分に対応可能だという判断をしたのだと思います。

金融庁

  • コインチェックが自力で改善するのは難しい
  • 厳格な登録制を運用する

ニュースの情報によると、金融庁としてはコインチェックが自力で経営体制を改善することが困難だと考えているようです。今まで登録申請中でみなしとして許可したような会社にも業務改善命令や業務停止命令を出しており、みなし業者が既に5社撤退することになっています。金融庁としては、このままコインチェックの自力での改善に任せるわけにはいかないが、取引が継続できなくなると影響が大きいと考えているのではないでしょうか。そこで、コインチェックとやり取りをするよりも既に証券業を行っており、金融庁とのやり取りにも慣れている会社にやってもらう方が安心と考えているかもしれません。

今後どうなるか?

ニュースが出た以上、マネックスによる買収は行われると思います。コインチェックと同程度の経営体制で運営しているところもなかなか厳しく、登録企業、みなし登録企業で大手に買収されるところもありそうです。純粋な新規参入は大手ばかりになりそうですね。ちなみに、マネックスは昨日、ストップ高でした。

【まとめ】コインチェックのNEM流出騒動、和田社長や犯人について

今年に入って、仮想通貨取引所のコインチェックがハッキングされ、NEMが盗まれました。仮想通貨取引所からお金が盗まれることは過去にもありましたが、仮想通貨の市場が伸びた後のタイミングで、約580億円という莫大な金額が盗まれたことから非常に話題になりました。騒動も2ヶ月ほど経ち、落ち着いてきたので、まとめていきます。

時系列で見るCoincheck事件

1月26日:NEMの流出

自分が第一報を知ったのは、やまもといちろうさんのツイートでした。色々と評判の多い人ですが、こういった影響度の大きい内容を取材なしで書く人ではないので、少なくとも何かあったのではないかという印象でした。ここで、コインチェックのウォレットからNEMが不正に送金されていることが確認されました。

ビットコイン取引所「コインチェック」で620億円以上が不正に引き出される被害が発生

1月26日(深夜):最初の記者会見

深夜からコインチェックにより記者会見が開かれ、代表取締役社長の和田晃一良さんと、取締役の大塚雄介さんによって状況が説明されました。内容としては、取引所のNEMが盗まれたということ、原因は調査中だということ、補償の内容などは検討中ということが発表されました。社長が若いこともあり、明らかに動揺していたので、大塚さんが答える場面が非常に多くなっていました。補償の詳細が発表されなかったことや社長の若さ、セキュリティに関してコールドウォレット(オフライン)でなく、ホットウォレット(オンライン)で管理していたことや仮想通貨交換業者登録がみなしで営業していることに対し、指摘がありました。

1月28日:全額補償の発表

これもツイートで知りましたが、600億前後の金額を全て補償するという対応方針が発表されました。このときに補償の元が自己資金か借入か出資なのかなどが明かされず、色々な憶測を呼びました。補償自体もそうですが、この中でNEMの保有者が約26万人ということが明かされ、1つの取引所のややマイナーな仮想通貨に26万人もの人が投資しているということが話題になりました。

1月29日:関東財務局から業務改善命令

事件を受け、関東財務局が原因究明やリスク管理改善などの業務改善命令を出されました。また、金融庁から利用者に仮想通貨に関するトラブルの注意喚起がされました。

2月2日:金融庁がコインチェックへの立ち入り検査

金融庁がコインチェックの顧客資産の管理状況やセキュリティー対策、財務状況などを明らかにするために立ち入り検査が行われました。金融庁に対しては、概ね好意的な反応が多かったように思います。

2月3日:被害者の会設立

コインチェックを提訴する被害者の会が設立されました。集まった原告が30人程度で(現在は増えているようですが)、被害総額もあまり大きくなく、最初は注目されましたが、その後話題に上がることも減りました。現在も活動をしているようです。

2月13日:業務改善命令の報告書提出・日本円出金再開

この日コインチェックでは、記者会見を再び行い、現状を説明しました。日本円の出金は同日より再開し、約401億円の出金指示を行ったことを明らかにしましたが、NEMの補償時期に関しては、明らかにしませんでした。

3月8日:2度目の業務改善命令・2度目の記者会見

業務改善命令を再び受け、業務改善計画の提出や計画に対する進捗を毎月報告するなどが命じられました。また、犯行の手口も明らかになり、コインチェック社の従業員にメールでマルウェアを仕込み、それを使って秘密鍵を入手したようです。このタイミングで具体的な日程は明かされませんでしたが、近いうちにNEMの補償や仮想通貨の引き出しなども再開するということが発表されました。

3月12日:一部仮想通貨の出金・売却再開

3月12日より順次、仮想通貨の出金・売却を再開しています。最近ではあまり話題にも上がらなくなったように思います。ビットフライヤーやBinanceなど他の取引所に流れているようです。

一部仮想通貨の出金、売却再開のお知らせ

 犯人は?取り返せないのか?

しるし(モザイク)はつけられる

盗まれてすぐの時点で取り返せるのかといった議論がなされていますが、結論から言うと難しいようです。実は、盗まれた後にNEMの機能を使い、モザイクと呼ばれるもので、そのNEMが盗まれたものであることを示すしるしが付けられました。これで、すべての人や取引所がそのモザイクのついたNEMの取引をしなければ換金できないため、無価値になります。

換金は防ぎにくい

ただ、すべての人の換金を防ぐことが難しく、40%程度が既に処理(洗浄)されてしまったという見立てもあります。犯人は、ダークウェブと呼ばれる匿名性の高いサイトでやり取りをしており、ディスカウントした価格でビットコインやライトコインと交換したようです。他にもカナダのCoinpaymentsという決済サービスを使い、モザイクを消そうとしたりと様々な手法を取っています。

ハードフォーク(分岐)されないのか?

仮想通貨が盗まれるために、毎回ハードフォークに関しての議論が出ます。要は、その不正がなかったようにしてしまうという選択肢があります。ただ、今回の件の場合には、かなりの早い段階で、NEM財団はフォークを行わないということを明確に主張していました。理由はシンプルでセキュリティ上の問題はNEMにあったのではなく、コインチェックの体制にあったからです。ホットウォレットでなく、コールドウォレットに保存されていたり、マルチシグと呼ばれる秘密鍵を複数用意して分散して管理していればこのようなことが起きなかったということです。当たり前ですが、こうした問題が起きるたびにフォークしてしまうと、仮想通貨の分散的な管理という特徴が生かせなくなります。特定の集団が自分に気に入らないことを無かったことにする通貨を誰が買いたいと思うでしょうか。

なぜ起きたのか?

なぜ今回の事件は起きたのでしょうか。それぞれのプレーヤーの観点で考えたいと思います。

ハッカー:犯罪として割が良すぎる

そもそも仮想通貨の取引所からの盗難は非常に割が良いです。銀行強盗をするとなると、非常に大きなリスクを伴いますが、取引所のハッキングはそれに比べて手間もリスクも少ないです。今回の犯行を見てもすべてがオンラインで完結しています。相手も何十年も運営しているセキュリティが万全な銀行とは異なり、法整備すら整っておらず、取引所ごとのセキュリティレベルも低いところがあり、簡単に億単位のお金が盗めてしまう現状があります。

コインチェック:拡大を急ぎたい

インターネットビジネスはWinners take allとなるので、少しでも早い拡大が重要です。極端な例でいうと、フリマアプリのメルカリとFrillで、前者は後発ながら時価総額で2,000億円以上になり、今も伸び続けていますが、後者は100億円以下の価格で買収されました。1位と2位でこのレベルの差があります。これをみなわかっているので、少しでも早く成長をさせようと競うことになります。その結果、セキュリティーよりも事業拡大を優先し、CMに投資をしたのではないかと考えられます。セキュリティーなんてどうでも良いという話ではなく、あくまで優先順位の問題かと思います。

株主:業績拡大はWelcome

一部では株主に関する責任も指摘されていましたが、ここはかなり悩ましいポイントで彼らとしては投資先のリターンが重要なわけです。上記の例でいうと、2,000億円の会社の10%分の株式と100億円の会社の10%分の株式では大違いです。特に、こうしたスタートアップに投資する株主は大きなリターンを望むので、業績拡大を優先したいという会社を止めるのは非常に難しいということです。現実には、会社に対する影響力が大きい株主もそうでない株主もいるので、関係者でない以上はわかりません。

金融庁:やや甘かったか

国によって仮想通貨への取り組みは全く異なります。中国などはICOを禁止したり、国内取引所を閉鎖させたり、明確に禁止する方向で動いていますし、アメリカは規制はするものの、どちらかというと市場を成長させ、かつグローバルで主導権を取れるような形で考えています。日本もどちらかといえば後者に入ります。今回の騒動後は、かなり基準も審査も厳しくなったようで、3月までに5社の仮想通貨交換業者が撤退することになりました。複数の取引所が業務改善命令や業務停止命令を出され、刑事事件に発展(預かった通貨を私的に流用)したものもあります。

コインチェックについて

元々は違う事業を行っていた

コインチェックは元々は、レジュプレスという名前でstorys.jpという別のサイトを運営しています。ビリギャルの話が書籍化・映画化されましたが、あの話もstorys.jpに投稿されたものです。その後、2014年に新規事業としてビットコイン事業を開始しました。

社長:和田晃一良が在学中に起業

レジュプレスという会社は和田さんが東工大に在学中に設立されました。その後、和田さんは東工大を中退したので、社会人経験なしで起業するという起業家っぽい経歴です。(ホリエモンとかも一緒ですね)

取締役:大塚雄介はネクスウェイで営業出身

取締役の大塚さんは早稲田大学の大学院を卒業し、ネクスウェイという会社で営業や事業企画に従事した後に参画したようです。

金融経験はなし

上記の通り、二人とも金融業界の経験が無い中での新規事業で、投資家を含め、多くの反対を受けたと様々なインタビューで語っています。実際、その業界の経験があっても失敗するケースもありますし、無くても成功するケースがあり、どちらかというと会社として学習したり、チームにそういった人を巻き込めるかという観点が重要かと思いますが、今回の一件を招いた要因として、やはり業界経験が無い中で金融のリスク・恐さというものが軽視されていたということはありうるのかなと思いました。

自分の身は自分で守る

ブロックチェーンの仕組みは安全ですが、取引所やウォレットの管理など落とし穴はたくさんあります。取引所を使うのであれば、二段階認証を使ったり、購入した仮想通貨はハードウォレットに入れて管理をしたり、自分の身は自分で守りましょう。安全性の高い取引所も低い取引所もありますが、完全に安全なものはありません。

CMに出ていた出川さんの炎上

最後にどうしても触れたかったのですが、コインチェックのCMに出川さんが出ていました。CMに出ていたというだけで炎上しており、かわいそうだなと思ったのですが、コインチェック社に出された最初の業務改善命令の報告書提出期限が2月13日で、出川さんの誕生日だという皮肉な偶然が話題になりました。

感想とまとめ

自分もスタートアップで働くものとして攻め(事業拡大)と守り(法律・安全性)のバランスは非常に悩ましいと思いました。自分が社長だったときに、後者の優先順位を上げられるかというと悩ましいです。コインチェックも今回の件が無ければ、シェアを大きく拡大していたでしょう。

まとめ

  • NEMが盗まれた
  • 取引所は非常に狙われやすい状況にある
  • 盗まれた仮想通貨を取り戻すことは非常に困難
  • 会社も株主も事業拡大を急ぎたい
  • 政府も市場を潰したくない
  • 今後は金融庁のチェックも厳しくなり、同じようなことは起こりづらい
  • ただ、自分の身は自分で守った方が良い